またひとつ、年を取る。
子供の頃は誕生日が待ち遠しかった。
誕生日に貰うおこずかいで、大好きなお人形や
お人形の家具セットなどを買うのが楽しみだった。
子供の頃は誰だって誕生日が来るのを指折り数えていたのだと思う。
年を取るにつれ、誕生日が来るのが嫌になる。
普段は忘れて過ごしていても、この日が来ればいやでも思い出す、
年を取った自分。
十代の頃は、大人になったらあれもしたい、
これもしたいと思ったものだ。
こんな生活はしたくない、こんな大人にはなりたくないと、
いつまでも夢を追い続けていたい、
夢を持ち続けていたいと願っていた。
いざ、実際社会に出てみたら、
そんなものは儚い幻想にすぎないことを嫌というほど思い知らされた。
世の中は何一つ自分の思い通りになどなりはしないこと。
夢はあくまでも夢、現実には起こりえないってこと。
人は夢だけを追いかけて生きてはゆけない。
人は生きるために働かなくてはならない。
生きるためには足下を見据えて歩いてゆかなくてはならない。
上を見るな、下を向いて歩いてゆけ。
高望みはするな、分不相応な願いをもつな。
地道にこつこつと、働いて生きる。
おとぎ話ような世界に生きられる人間なんて、
世界中でほんの一握りなのだから。
ほとんどの人間はその他大勢の中に含まれる。
お金も才能も無い人間が、
甘っちょろい夢なんぞ実現できるはずもない。
ただ、働いて働いて働いて、生きろ。
そうやって人の一生は過ぎてゆくものだから。
夢を見ることは、罪ですか。
空を見上げるのは、そんなにいけないことですか。
実現しないことなどわかってる。
自分がどの程度のものかくらい、自分が一番分かってる。
でもね、それでも見たいんだよ、夢。
叶うはずなどなくっても。
一番目の夢だけがすべてじゃないもの。
二番目の夢も、三番目の夢も、四番目、五番目だってあるじゃない?
そのうちのどれかが、いつか叶うかも知れない、
そう思いながら生きてゆくことは、いけないこととは思わない。
たとえ他人に笑われても、夢は捨てずに生きていたい。
叶わなくてもいいじゃない?
手に入らなくてもいいじゃない?
夢見る力は、生きる力。
そう思って生き続けたい、青いねって言われても。
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